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雪山、それは脅威・・・!大自然の猛威を完全再現した映画3作。
最近、花粉も飛びまくってあったかくなってきたかと思ったら、強風吹き荒れまだまだ肌寒い日も。体がついて行かない。。。
ちょっと前に、ずっと観てみたかった『八甲田山』をようやく観れて・・・そしたら、ちょっと衝撃が過ぎて。
1977年の映画で、その頃はCG技術なんかないもんだから、「これ、どうやって撮影してるんだ?」と思ったら、「いや、その映ってる通りに撮ったんだ」・・・と。恐ろしい。
話の内容も当時の日本の軍部の“パワハラ”と(山だけに)“マウントの取り合い”的な事情が生んだ出来事による映画だが、撮影に挑んだスタッフやキャストにおいても鬼気迫る。話の内容の通り、作る方も命がけだったに違いない。
そんなことを思って、近頃気温も上がってきたのでちょうど良いとカコつけて。今回は、「雪山」「遭難」「凍死」「人間ドラマ」「実話」に長けている映画3本をご紹介。
話も撮影も想像を絶する。1つ言えることは、準備不足と雪山の天候と吹雪をナメると、一瞬で死、ということ。
数年前のGWに「尾瀬にハイキングだ!」と旅行に行ったら、尾瀬にはまだかなり雪が残っててハイキングコースまで降りられなくて敗走した苦い思い出・・・あれも情報と準備不足。GWぐらいでは尾瀬の雪は解けない!
そんなわけで、登山家でもなんでもないだけに、逆に準備に余念がない状態、一瞬たりとも気を抜かない覚悟で挑める確証があったとしても遠慮したい境遇をご堪能ください。
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1.『エベレスト 3D』(2015)
ジェイソン・クラーク、ジェイク・ギレンホール、ジョシュ・ブローリン、サム・ワーシントン。ハリウッドの武骨だけど演技派が集う過酷な山岳ドラマ。
世界最高峰の“エベレスト”。
そこで、1996年に起きたエベレスト登山史上でもかつてない悲劇として知られる大規模遭難事故を描く。
エベレストは、素人集団や個人が思いつきで勝手に行って勝手に登って良い山ではなく、事前の登山申請等も必要。事前にしっかりと訓練を積み、準備を重ね、現地でも少しずつ登って心肺機能を標高に適応させながらいくつかあるアプローチコースを選び、戦略的に登頂を目指す。それが“地球のてっぺん”。
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1996年にとあるガイド会社が登山ツアーが組み、登山経験もある多種多様な人材で組成される。いわば“ビジネス的アマチュア登山家集団”。それを率いるのが経験豊富な登山家ロブ・ホール(ジェイソン・クラーク)。
現地にもエベレスト登頂を目指す商業的な集団が点在し、その功績を成果としたいと息巻いてごった返していて、成果を争おうとしたり、予算の兼ね合いで先を急ごうとしたり、山への敬意を軽んじていたり、登山マナー的にアウトなヤツがいたりと、何となく殺伐とした不穏な空気も流れる。
そんな中、挑んだ“ビジネス的アマチュア登山家集団”の実際の出来事を描く。
8,000メートルを超える山頂付近には“デス・ゾーン”と呼ばれる地帯があり、難所とされる。その“デス・ゾーン”と呼ばれる由縁のような悪天候に見舞われ、進むも退くも困難になっていく絶望的なクライマックス。
無線でのやりとりや救助もすぐにどうこうできない孤独感、恐怖感が終始漂い、本当に“雪山の厳しさ”を少しだけ体感できる気がする。
この映画で“人は寒すぎる環境に晒され続けると、逆に服を脱いでしまう”ということを知る。
日本では「矛盾脱衣」などと呼ばれるらしい。低体温症などからくる体の代謝と外気温との錯覚や、異常な状況下によるアドレナリン分泌効果が色々起きて、体が混乱状態になって「寒すぎて、暑い!」みたいなことになって服を脱いでしまうらしい・・・・標高何千メートルでの断崖絶壁の猛吹雪の中で・・・。
実際の事件ということも含め、最終的な顛末にはなかなかやるせない気持ちになる作品。
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2.『ヒマラヤ ~地上8,000メートルの絆~』(2015)
これも2015年の映画だった。韓国の登山映画。“ヒマラヤ”、つまりこれも“エベレスト”。
韓国の推しスター、ファン・ジョンミンのアツく、気高く、男気な演技が光りに光る。
これもこれで世界最高峰の山を相手に絶望的に辛く悲しい実話ではあるが、師弟愛というか、友情というか、“誰でも見れるわけではない領域の景色に挑んで見てきた2人”だからこそ生まれる人間ドラマがある。これも、実話ベース。
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この映画でも初めて知ったことが2つある。
1つ目は、エベレストのてっぺんは1ヶ所ではない、ということ。ヒマラヤ山岳地帯には8,000メートルを超える峰が14座あるらしい。その14座を完全制覇した登山家オム・ホンギルの話。
2つ目は、その峰の登頂はチーム全員で登頂するわけではない、ということ。何人かのチーム構成の場合、代表者やその時のメンバーの体調や役割を考慮して、選ばれし何人かで登頂するのが慣例。つまり、チームとしては登頂成功でも、個人としては登頂しない人もいる。
この作品の本筋はその14座を完全制覇したことを描いているわけではない。そこがスゴい。
それ以外に何を描くのか、、、、それは、それは!涙なしには描けない至極のエピソード。
準備期間からチームにやってきた不出来な後輩、パク・ムテク。彼の不格好だけどひたむきな姿に呼応し、いつしか師弟のような厚く信頼関係で結ばれるようになり、2人を中心に14座制覇を目指す。
しかし、志半ばで主役のオム・ホンギルの方が怪我と年齢の影響で現役引退。それを受け継ぐ形で後輩パク・ムテクが14座を狙うも、彼がエベレストで遭難死する報道を目の当たりにする。
そこでオム・ホンギルは“彼の遺体を探し、家族の元に戻すため”に、当時のメンバーにも声かけながら現役カムバックし、再び世界最高峰、いや、愛弟子の元を目指す・・・・。
「恐るべき環境下で14座を制覇した!」だけではなく、「遭難してなくなってしまう哀しみ」だけではない、別々の男の関係とドラマを繋いで、切って、また繋げる、という実話。
「そこに山があるから」というような素人にはカッコ良いのか、無謀なのか測り兼ねる言葉があるが、その言葉の意味と、世界最高峰の最悪な環境下において、最終的に目指すのは“山のてっぺんではなく人である”という部分に心打たれざるを得ない物語。
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3.『八甲田山』(1977)
高倉健、北大路欣也、三國連太郎、前田吟、大滝秀治、丹波哲郎、加山雄三、緒方拳、、、。
当時の多くの名優が、これ以上ない過酷な“雪中行軍”を演じ切る、これは、、、これは観てよかった。
古い映画だから、画像素材や映像素材が乏しく、見た目を多く紹介できないのが残念でならないが、もうこれは実際に見て欲しい。
先に紹介した2作品よりも、なぜこんな話になったのか、どんな事が起きたのか、その時何を思って、何を言ったのか、結局どうなったのか。これは映画全編通して受け止めて欲しい。
「君たち、冬の八甲田を歩いてみたいと思わないか。」今なら“パワハラ”炎上事案発言。
“雪中行軍”。
日露戦争が秒読み段階。万が一、ロシアが本州の北端の青森に攻めてきた場合は、津軽海峡等が占拠され、太平洋側と日本海側に分断され行き来が難航し、連携ができなくなる。
それを懸念した陸軍の上層部は太平洋側、日本海側からそれぞれ反対側に往来できるように訓練をすべし、と。
その青森の北端の真ん中に位置する“八甲田山”。冬の北陸最北端の山岳地帯を抜ける、“雪中行軍”。
季節や地理を熟知する地元民でも愚行と揶揄するその訓練を行う2つの隊。
高倉健率いる弘前歩兵第三十一連隊。北大路欣也率いる青森歩兵第五連隊。
10泊で240キロほどを精鋭27名の小隊で行軍を綿密に計画する高倉隊。
一方、最速3泊で一気に攻める行軍遂行を計画した北大路隊。
北大路の上司の三國連太郎が作戦を比較し、こちらにも特色出せと、何と200名を超える大隊本部付きの大軍団で行軍することに、、、。
この北大路隊、200名強のうち、199名が命を落とす、という実際の遭難事故を描く、、、。
これも実際の出来事で一般的には「八甲田山雪中行軍遭難事故」と呼ばれる。1902年、明治35年の話。
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これはもう、本当に想像を絶する。
もろもろの都合でどんどん計画が狂う行軍道中、リーダーに任命されるももっと偉い人が付いてきてあれこれ注文付けるもんだから乱れに乱れる指示系統、過酷な環境のため徐々に疲弊し低下する士気と判断力、何もかもが裏目に出てしまう運のなさ。
「田代まであと2キロ、その2キロの道のりが、、、雪とはいったい何なんだろう」
「神田隊!神田隊は、どこにいるんだ!?」
最初に書いたが、実話としての話の内容も壮絶だが、これを作った、撮ったスタッフ、出演者の魂。
映画としては正しく“渾身の作品”。
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エベレスト3Dのmatchypotterの映画レビュー・感想・評価 | Filmarks映画
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